サファアの微笑み
森住 卓
(フォトジャーナリスト)
photo
by Takashi MORIZUMI
白血病のサファアにあったのは、5年前の1998年4月だった。マンスール小児教育病院の玄関で退院するところだった。私と視線があったとき、彼女はすてきな笑顔を見せてくれた。すかさず数枚シャッターを切ったその直後、風が吹いてきて、彼女のスカーフを取ってしまった。彼女の頭には産毛のような髪の毛しか生えていなかった。白血病の薬の副作用だ。付き添っていたお母さんは「この子は治ったから退院するのではないの。薬が無くなってしまったので、仕方なく、退院するの」と悲しそうに言った。
バグダッドの2つの国立の小児病院では湾岸戦争後増え続ける白血病やガンの子どもたちの治療を専門に行う病棟を設けた。
その原因は湾岸戦争で米英軍が初めて使った放射性兵器の劣化ウラン弾だという。劣化ウラン弾が戦車などの標的に命中すると、内部に進入するときに摩擦熱で燃焼し、ウランの酸化物が空気中を浮遊する。これが体内に入り内部被曝をする。同時にウランは重金属としての化学毒性を持っている。被曝と金属毒でおかされてゆく。昨年イラク戦争でも大量に使われた。イラクは13年前の劣化ウラン弾と今回の戦争で使われた劣化ウランによる汚染で取り返しの使いに事態になっている。
白血病やガンに冒されたイラクの子どもたちは人類の未来に警鐘を鳴らしているのだ。