
想い出のサダコ
文:大倉 記代
絵:夜川 けんたろう
発行:よも出版 定価:1200円+税
問い合わせ:03-3954-6571 (よも出版)
広島の「原爆の子の像」には、世界中から平和を願って、千羽鶴が届けられている。今年10月25日は、その「原爆の子の像」のモデルになったサダコの50回目の命日だった。
この日に合わせ、かつてサダコと同じ病室で闘病生活を送った大倉記代さん(64)が、サダコとの思い出を初めて綴った『想い出のサダコ』が出版された。
大倉さんが描く想い出の中のサダコには、病に苦しみながらやっとの思いで鶴を折り続けたサダコのイメージはない。大倉さんの記憶の中のサダコは、病院の中を活発に動き回る快活な少女だ。サダコは、私たちが思っていた以上に生命力に満ち溢れていたのだ。病院の中をあちこち遊んで回るサダコに、バスラの病院のプレールームやモーメンホテルの廊下で遊ぶイラクの白血病やがんの子どもたちのイメージが重なって見えるのは、私だけではないだろう。サダコもイラクの子どもたちも、自らの病気に打ちひしがれるのではなく、一日一日を前向きに生きようとしているのだ。
〜本文より〜
私は自ら進んでサダコとの関係を言うことはほとんどありません。それは子ども時代のことだったとはいえ、禎子ちゃんのおかれた立場も理解出来ず、何もしてあげられなかったという思いをずっと抱いて生きてきたからです。
(中略)その痛みを。十四歳にもなっていながら、何一つ感じ取ることが出来なかった自分の、未熟さというより無知が恥ずかしく、禎子ちゃんを語ることは、そうして自分をさらけ出すことでもあり、苦痛だったのです。しかし「サダコ」は今や、世界平和のために大きな役割を果す存在になっています。私も自分の感情にばかりとらわれているわけにもいかず、私が語ることで、思春期という人生の大きな節目に立った禎子ちゃんの、短かった命の輝きを感じとってもらえるなら、それらを生きて味わった私の責務かなと思えるようになりました。
サダコについて語ることは苦痛だったという大倉さんが「短かった命の輝きを感じとってもらえるなら」と綴った『想い出のサダコ』は、その「死」の側から語られることの多かったサダコを、輝かしい「生」の部分から語ることで、ともすればくじけそうになる私たちの平和への思いを優しく柔らかに奮い立たせてくれる。なお、このことに関しては、夜川けんたろう氏の柔らかなタッチの絵が大きな役割を果していることもぜひとも述べておかなければならない。
大倉さんも、4歳の時に、爆心地から3.3kmの自宅で被爆した。そして今年5月、NPT再検討会議が行われているニューヨークへ市民代表として訪問後、体調を崩し、現在はがんが見つかって闘病中だ。『想い出のサダコ』は、大倉さんの病床から私たちに届けられた穏やかな平和へのメッセージだ。
なお、この本の収益の一部は、JIM-NETを通して白血病やがんに苦しむイラクの子どもたちのために役立てられる。
(くまねこ 記、資料提供:大好き西東京の会)